2022年4月12日に日本でレビュー済み
著者の内面と外側の旅路を読んでいると、わくわくし、いつのまにか物語へと引き込まれ、あっという間に読み切ってしまいます。 しかも読み進める間に、自然と自分自身を振り返り、たくさんの気づきが起こりました。 人類の歴史が闘争の歴史なのも、全て「何か」(例えば、感情、思考、利益、自己イメージ、民族意識、文化、仕事、役割…などなど)に自分を重ね、それらが傷つくと、自分が傷つくように感じているから。 攻撃は最大の防御ということで、それらを守るために、あるいは傷つことなく拡大、発展していくために、周囲と戦い、自分の一部が一部と戦って、必死で「自分(と思っている何か)」を守ろうとする。視野は狭くなり、物事は歪んで聴こえる。 問題は、心理学で同一化と呼ばれるそれらのダイナミクスが無意識のうちに行われていることです。 この「同一化」から自由になる、「脱同一化」のための視点とプロセスと手法が描かれているのが本書です。 一見すると真面目な自己探求のテキストに思えますが、文中に登場する教師たちの一言や、挿入される著者の一言にはユーモアがあり、まさに脱同一化している様子が現れているようです。 脱同一化、非同一化という難しい課題を、こんなにも軽やかなタッチで描き出せるなんて。 本書の中に登場する、瞑想の教師達の言葉にも、その言葉に対する著者のコメントにも、深い含蓄があり、ただ読んでいるだけで、自分を振り返って、洞察がたくさん生まれました。 読むことで気付きが広がり、本書の中に具体的に書いてあるメソッドを実践すれば、実人生を変化させられる大きな可能性を持つ本だと感じます。忘れてしまってもまた読み返せる、書籍という形での出版は、後世のためになることでしょう。 あらゆる悩みを持つ人に、おすすめできます。
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