関係フレーム理論
「体験の回避を説明しようとする学習理論の一つである関係フレーム理論は(RFT, Hayes, et al., 2001)は、言語と認知の機能に着目している。
人間は、刺激の関係を最初は一方向にしか学習しなかったときでも、それら双方向的に連合させることができる。
この学習のユニークなところは、思考、イメージ、情動といった内的体験がそれが表象する現実の事象と同じ機能を果たし得るところである。
Hayes(2001)は、関係的な反応、つまり一つの事象に、他の事象にするような反応をすることは、まず人間社会における言葉のやり取りの中で強化さ れると考える(例えば、二つの事象の関連を学習するプロセスを言葉で表現することを強化しあう)。
このように、双方向的な連合の学習は、それによって、コ ントロールが容易になるという関係の道具的な力のために、維持されていると考えられる。
皮肉にも、人はこのような内的体験を理解することはできても、そこから逃れるすべはもっていないようである。
思考や感情のような内的事象を避けようとし てもうまくいかないことが示されている(Gross & Levenson, 1993, 1997; Wegner, 1994)。
しかし、思考制御は短期的にはうまくいく場合もあるため、それが逆効果であることにはなかなか気づかない(Gold & Wegner, 1995)。
よって、人はむなしく思考制御を続けてしまう。
同時に、人間は、文字通りの評価的な言語によって、将来を心配したり、物事を恐れたり他者と比較して劣等感を抱くこともできる。
さらに、自分の反応を病的 とか嫌悪的などとラベルすることもできる( Hayes et al., 2001)。
このような言葉は、それが指し示す現実(自己像も含む)と同様に体験される。
この現象は認知的フュージョン(congnitive fusion)と呼ばれている(Hayes, Strosahl, et al., 1999)。否定的に評価された事象は、認知的フュージョンのために、永続的な自己像にも響くなど、より嫌悪的で危険なものに見えてくる(Hayes, Strosahl, et al., 1999)。
その結果、回避の対象になる。」
(「マインドフルネス&アクセプタンス ー認知行動療法の新次元ー」107頁、4章)