脱中心化とは、何ごとにもとらわれないこと
「脱中心化」 「こうした「距離を置くこと(Disitancing)」や「脱中心化(decentering)」 の重要性は、CTの文脈の中でも以前から認識されていたが(例えば、Beck ey al.,1979)
たいていの場合それは、それをすること自体が目的というよりも、思考内容を変えるための手段としてであった。
一方で、Ingramと Hollon(1986)などの様に、我々と同様の視点から距離を置くことの役割を論じた研究者もいる。」(76頁)
「脱中心化」は、一つのものに執着していることから離れることだろう。一つとは、思考、固定観念には限らない。感覚、思考、感情、衝動、身体反応、行 為、何でもであろう。一歩、距離を置く。
クライエントに指導する心のもちかたも「脱中心化」であるが、カウンセラーのカウンセリングの技法も、脱中心化と 言える。一つのところだけをねらわない。認知から行動にいたる全体の関係、時には生きかた全体を視野にいれているようである。 マインドフルネスは、「認知内容そのもの」の直接介入によらずに「うつ病」を治す。
「CTが効果をもたらす過程をこうした新しい観点から分析することで、我々はネガティブな思考や感情との関係性をシフトさせ、その一方でCTと異なり直接的に思考内容を変容する構成要素を含まない、全く新しい介入方法を考案する自由を手に入れたのである。マインドフルネス・トレーニングは、まさにそうした介入方法の一つといえよう。」(77頁)
意識の表層部分にある感覚、思考、感情、衝動、身体反応、行 為から脱中心化していく過程で、「気づき」が拡大・深化して、意識のより深層にある本質的なものや独自の才能・強み、さらには中心にまで気づけるようになる。さらに、ひとはそれら価値あるものにコミットメントして、新しい行動を生み出せるということが起こる。こういった過程を踏むには、「気づきの拡大」が目的であることが大切だ。「脱中心化」は、その効果のひとつである(V)